死なない猫の会

好奇心は猫をも殺す

地元真言宗の葬儀にまつわる独特の風習について

※宗教と人の死に関する話です。
 敏感な方・もしくは不謹慎だと思われる方は、この先はお控えください。


なんか物騒な冒頭ですみません。
温故知新の横です。この自己紹介、聖闘士星矢みたいだな!

今日は宗教の話をします。やばいやつじゃないよ。


冠婚葬祭ってならべて言うけど、葬式が1番、民族の宗教~!という感じなので、葬式文化に興味がある。
私の実家は周辺地域もろともガチガチの真言宗で、「一生に一回は高野山行っとけ」的な地元だから、葬儀にまつわる風習もだいぶ変わっている。身内が亡くなった後に団子を山から放り投げたりする。

その妙な風習らに気づいたのは数年前、祖父が亡くなったときで、えー!なにこれ!と思うことが色々あったので流れをメモしておきたい。


葬式から四十九日までの大まかなスケジュール

1日目  ①通夜
2日目  ②葬式と火葬
初七日  ③寺(しかも檀那寺じゃない)に祖父のスーツを納めに行く
     ④十三仏参り開始
三十五日 ⑤団子ころがし
四十九日 ⑥十三仏参り終了と法要


以下、詳細です。

①1日目、通夜

別段変わったことはない。(何か思いだしたらあとで追記する)
私(社会人)と弟(大学生)と従姉妹(高校生)の孫ズでシフトを作り寝ずの番をした。弟は徹夜したらしい。

関係ないけど遺影用の写真を葬儀会社に渡したら、背景色が変えられて写真では曲がっていたネクタイがまっすぐになり、えらい綺麗な遺影になっていた。

②2日目、葬式と火葬

他地域ではしないのかな?13枚の仏札を故人の顔の周りに並べるようにして棺桶に入れる。
親とかに聞いた感じだと、死出の旅(一般的に死んでからの死者の旅。このへんが分かりやすい)の際に仏さまたちのご加護をもらえるよう入れるんだそう。
仏札は桃みたいな形で子供の手のひら位の大きさ、13枚それぞれ違う仏(十三仏)が描かれている。
でも後から調べたら、名前は違えど
十三仏】=【死出の旅の途中に死者を審理する裁判官】
だったので、たぶん「地獄でなく良い生まれ変わりを、いっそ極楽浄土によろしく十三仏(裁判官)様!」という感じなのかな。
そもそも閻魔大王(35日目の裁判官)=地蔵菩薩(十三仏の1尊)らしい。

あとは変わったことではないけど、出棺のときに「魂がこの世に戻らないように」故人の茶碗を割るアレもした。
祖母がなぜか客用の茶碗を割り、後日本当の愛用茶碗が発見されたりした。

③初七日、寺に故人のスーツを持っていく

スーツというか慣れ親しんだ衣服を納めるらしい。
仕事で参加できなかったので詳細はわからないけど、ググッた感じだとほかの地域もありそう。
経験して無いのでわからない、もちょっと調べる機会あったら追記するかも。

十三仏参り開始

ついにこの日から、遺族による長期ミッション「十三仏参り」を開始。

【内容】
四十九日までに周辺地域約600km²に点在する13箇所の寺を回ってそれぞれ仏の描かれた札をもらい、最後に檀那寺に納める。
ドラゴンボール集め的な?」
「願いが叶うとか、四十九日までってことは故人の極楽浄土行きとかに関係してる?」
と思ったけど、聞いてみたら「葬式のとき棺桶に入れた13枚の仏札は檀那寺がくれたけど、次に他の檀家が死んだときにも使うから、使った分は遺族が自分らで集めて檀那寺に納め直さないといかん」というめちゃくちゃ合理的な理由だった。なんやねん。
でも四十九日までということだし、各寺でお経も読んでもらうので、たぶん供養的な意味も含まれている。(というか含まれていてほしい…)

【起源】
最近取り寄せた地元の風土記によると、この十三仏参りが故郷の地域で始まったのは室町時代だとか。
それまでは神道とかアニミズム的土着宗教が強かったけど、僧が常駐し始めて真言宗が普及しだしたらしい。ド田舎だから仏教の根付きが遅いのね。

【誰がするのか】
寺を回るのは基本遺族ならいいようだけど、私の母が信心深めで、
「おばあちゃん(故人の妻)と自分(苗字を継いでいる私の母)、喪主(苗字を継いでいる家の唯一の男性で当時19歳の私の弟)は全部回った方が良いかな?」
ということだったので基本はその3人で、私(弟がいるから長女でも重要視されないぽい)とか叔母家族(苗字を継いでいない)なども行ける日は参加、という感じになった。

【13か所の寺】
13箇所のお寺はそれぞれ十三仏のどれかをメインで扱っていて、その真言十三仏それぞれで異なる)を置いてあり、「十三仏参りできました~」というとお経を唱えてくれるので一緒に唱える。なんならお茶とお菓子が出てきたりもした。
私らは故人のちっこめの写真を持って回る。山の頂上の寺とかもあって地味にきつい。

*お経メモ
お経の中に同じ真言を七回唱える、というのがかなり何回も繰り返される。
初めは「いや今何回目やねん」と唱えながら思ったけど、数え方を教えてもらった。

①お坊さんと唱えるときは「ラスト1回やで!」のときにお坊さんがおりん(鐘)をチーンとやってくれる
②自分で数える場合は数珠の粒をつまんで数える。ふさふさ側から数えると8個目の粒が小さくなっていて「7」を数えられるようになっている(が、そうなってない数珠もあるので注意)
 
ちなみにここまでほぼ毎日お経を唱えているので、このころついに長いお経を半ば覚えはじめた。
十三仏真言ではないけど、光明真言は数年たった今でも覚えていたりする。
おんあぼきゃべいろしゃのうまかぼだらまにはんどまじんばらはらはりたやうん。

⑤団子ころがし

十三仏参りをこなしつつ、三十五日目には朝から団子をつくり、指定の山から団子を転がす。

【手順】
1.早朝から40個くらい(覚えてない)白玉団子をつくる
2.朝から遺族総出で地域指定の山に登る
3.山の上にある地蔵の前でお経(フルver)を唱える
  (お坊さんはこないので唱える先導は喪主の弟がした)
4.山から団子をころがして落とす

【意味】
故人は家の近くの高い山から天へ上るという考えに基づく。
なんでも、1人心細く死後の旅をしている故人に途中で餓鬼が意地悪をして道を妨げたりするらしい。
その餓鬼らを故人から退けるために団子を投げるらしく、転がる団子を餓鬼が追いかけている間に故人はスタコラと走り抜けるんだそう。
でも、三十五日って閻魔による審判の日らしいので、タイミング被ってない?とおもいつつ…口承による起源だからそんなもんなのかもしれない。

山の下は普通の車道なので、そこに転がりおちた団子を念のため隅に寄せて、終了。

十三仏参り終了

この日までになんとか集めた13枚の仏札を檀那寺に納め、普通の四十九日法要をする



以上です。
調べたら一発で地元は割れてしまうんだけど、土着の風習を体験できたのはとても面白かった。
またなにか興味深い内容があったら、記事にするか、追記しようとおもいます。


おまけ
ちなみに母は祖母と共に百日まで毎日お経をフルで唱えたらしい。
おじいちゃんもきっと旅を走り抜けたように思う。